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扱いやすいアンモニアから水素を生成する燃料電池を開発

© Fraunhofer IKTS

独フラウンホーファー研究機構は2024年11月4日、フラウンホーファーセラミック技術・システム研究所(IKTS)の研究チームが、アンモニアを使用して、高効率で発電できる高温燃料電池スタックのデモ装置を開発したと発表した。アンモニアは、燃料電池スタックで分解され、生成された水素が電気に変換される。電力と熱を1つのコンパクトなシステムで生成し、二酸化炭素(CO2)や他の有害な物質は排出されない。

水素は、発電に使用してもCO2や有害な副産物が発生しないことから、エネルギー源として大きな期待が寄せられている。しかし、水素ガスの貯蔵と輸送には技術的な課題がある。

研究チームはその課題を考慮し、扱いやすい水素誘導体であるアンモニアを使用した。アンモニアは、肥料の製造など化学業界で数十年にわたって使用されてきたため、取り扱いのプロセスが確立されており、貯蔵と輸送が比較的容易である。さらに、アンモニアは水素キャリアとしても高いエネルギー密度を持つため、研究者のLuara Nousch氏は「理想的な出発物質だ」と述べている。

研究チームは、アンモニアを分解して水素を生成し、それを用いて発電する全プロセスを1つの装置内で処理する燃料電池のデモを構築した。このプロセスでは、アンモニアを前処理した後、クラッカーに投入して300度以上の温度で加熱する。ここでの反応により、アンモニアは水素と窒素に分解され、窒素は水蒸気とともに無害な排気ガスとして放出される。

その後、水素は高温燃料電池に供給される。セラミック電解質では水素がアノードを通過し、空気はカソードを通過する。水素の分解により、電子がアノードからカソードへ移動し、電流が流れる仕組みだ。この電気化学反応では、水蒸気に加えて熱エネルギーも発生する。二次燃焼によっても熱が発生し、その熱はクラッカーの温度を維持するために使用され、余った熱は建物の暖房などに利用できる。この手法の効率は、天然ガスを利用する場合と同じ60%だが、システムが比較的簡単で頑丈な構造であるという違いがある。

このシステムは、炭素を排出せずに電気を生成したい小規模な工業系の企業や、環境に優しい熱を供給したいと考えている自治体や地域のエネルギー供給企業に最適だという。また、大型船にもアンモニアと水素を利用した、脱炭素型の推進システムを搭載できるとしている。

fabcross for エンジニアより転載)

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