細かい作業を楽にしたい! オートフォーカス眼鏡「ViXion01S」を使ってみる
私は仕事としてものづくりをしています。日々の仕事の中で1mm単位の小さな部品を扱う作業も少なくありません。よくあるのがはんだ付け作業。そして最近増えているのが3Dプリンターを使った、筐体や部品などの制作です。
細かいパーツを扱う作業では、「見えやすさ」を確保するのがとても大切です。老眼が進みつつある私も拡大鏡を使ったり、眼鏡を変えたりと工夫しています。しかし、どうしても細部が見えにくくて集中できず、作業効率が落ちることに悩んでいました。何時間かすると、眼が疲れてパーツを見つめても何も見えなくなってしまいます。何よりも、視覚の改善のために複数の道具を使いながら作業をするのは煩わしいものです。
さらに、「細かい作業をしながらデータシートを読む」「マニュアルを見ながら3Dプリンターの細かい部分の修理をする」などのシーンでは、手元と文字を読むような視点を行き来させながら進めます。この場合は手元を見続ける作業よりもさらに煩わしさを感じることが多くあります。
そんな中、「ViXion(ヴィクシオン)01S」というオートフォーカス機能付きの眼鏡(オートフォーカスアイウェア)が存在することを知りました。Webで情報を確認すると、カメラのオートフォーカスのように、自分が見たいものがある距離に自動でピントを合わせる機能がある眼鏡だとのこと。
細かい作業がこの先も続くので、どれぐらい自分にとって便利なのか——メーカーからサンプル機をお借りする機会を得たので、いろいろなテストを通じてレビューします。
オートフォーカスアイウェア ViXion01Sとは
ViXion01Sは、すでに発売されている「ViXion01」の新しいモデルです。2024年9月26日よりクラウドファンディングサイト「Kibidango」と「GREEN FUNDING」にて支援受付を開始、わずか11日で目標金額の5000万円を達成しました。
ViXion01Sの最大の特長は、“近くも遠くもはっきり見える”点です。まるでカメラのオートフォーカス機能のように、見たいものにいつでもしっかりとピントが合い、最適な状態で見ることができるそうです。これは、センサーで対象との距離を測定し、距離に応じてレンズの形状を瞬時に変化させる機能によるものです。目のピント調節をサポートすることで、目の酷使や加齢に伴う「ピント合わせの煩わしさ」からユーザーを解放してくれるとのこと。
外観と特徴~今までとはまったく別世界の「アイウェア」
ViXion01Sの外観はこのようになっています。
アウターレンズ(普通の眼鏡のレンズに相当する大きいレンズ)の奥にある小さいレンズが、オートフォーカス機能付きのレンズです。目と目の間にある距離センサーが対象との距離を測定し、このレンズのフォーカスを自動的に調整することで、目のピント調節をサポートします。
ViXion01Sを手に取った印象としては、重量は大きめのサングラスと同じくらい。長時間装着していても疲れなさそうです。
前モデルではできなかったアウターレンズのカスタマイズができるようになったため、乱視対応、遮光、偏光、ブルーライトカットなど、より個々の課題に対応できます(クラウドファンディングの費用には含まれていません)。
鼻パッドには近接センサーが内蔵され、ユーザーがViXion01Sを装着すると自動的にオートフォーカスがONになります。2つのオートフォーカスレンズ間の距離は調整できます。
左右にそれぞれキャリブレーション(調整)用の視度調節レバーが付いています。ユーザーはこの調節レバーで左右の見え方を調整します。
キャリブレーションは1mぐらい前方を見つめながら行います。最初はぼんやりとしていたレンズの先にだんだんピントが合い、最終的にはクリアに見えるようになりました。その状態でViXion01Sの前に手のひらを近づけると、レンズが自動でピント調節を始め、普段なら見にくい近距離であっても指紋が見えるほどちゃんと焦点が合いました。反応時間もほぼリアルタイムと言ってもいいくらい短時間です。オートフォーカスとはこういうことなのかと納得した瞬間でした。
日常的に使うものということで充電方法が気になりますが、USB(Type-C)での充電に対応しています。公称最大約15時間の連続使用が可能です。
効率アップにつながる視覚体験~自分のラボで、ViXion01Sを使ってみて
操作方法やキャリブレーションの方法が分かったところで、普段私が見えない(見えにくい)ことでストレスを感じている作業を実際にやってみることにしました。はんだ付け、3Dプリンターの整備、バリ取りの3つです。
①はんだ付け
長時間はんだ付けをしていると、疲労のため、見ようとしても細かい部分が見えなくなり、心が折れそうになることがあります。普段は複数の眼鏡を用意し、さらに拡大鏡などを使って作業します。いろいろ持ち替えながらの作業となるので大変です。ViXion01Sを使ったら、はんだ付けがどれだけ楽になるのか、実は非常に楽しみにしていました。
まずは、ユニバーサル基板とヘッダーピンで使用感に慣れるところからスタート。
10円玉で部品のサイズ感が伝わるでしょうか。実際にはんだ付けしてみます。
オートフォーカスのおかげで、基板が視野に入るとすぐに最適な見え方に調節され、今までよりも非常に楽に作業ができました。
最初は自分の手の見え方に少し違和感もありましたが、練習していくうちにだんだん慣れて、効率が上がっていきました。
普段の3分の2ぐらいの時間で作業できました。
練習が終わったので、実際に使用する基板のはんだ付けもやってみました。
一度使用して見え方も分かったので、部品が密集しているところでも非常に快適に作業を進めることができました。これなら疲労感も少なくなりそうです。
今までに比べて、「疲れて見えなくなる」ことが減り、休憩しなくても作業に集中できる時間が増えました。
②タブレットでマニュアル動画を見ながら、3Dプリンターを整備
私のラボでは、3Dプリンター「Prusa MK4」を使用しています。経験のあるユーザーも多いと思いますが、外国製の3Dプリンターは修理や組み立ての際、Youtubeなどの動画を見ながら作業することになります。Prusaにも大変良いマニュアル動画があり、大きな助けになります。
私もよくこの作業をするのですが、問題は、この時にマニュアル動画を映したタブレットと、手元の細かい部品を見比べながら作業を進めなければいけない点です。
奥の遠い位置にタブレットを置き、作業自体は手元で行います。
ViXion01Sを使用しない場合は、動画の確認と作業時に2つの眼鏡が必要でした。何度も眼鏡を替えながら、動画と目の前の部品を見比べるだけで時間が経ってしまうということも多くありました。
こういった、視点を頻繁に切り替える必要がある作業に、ViXion01Sは最適なのではないかと思い、テストしてみることにしました。
今回、Prusa MK4のエクストルーダー(プリントの材料を供給する部分)の現状確認と整備のために、マニュアルを見ながら分解してみました。写真に写っているのはエクストルーダー内部のギアです。複雑な構造で、分解後に正確に組み立てるにはマニュアル動画を確認しながらの作業が必要です。
ViXion01Sを使用すると、動画の確認と整備作業が一連の作業としてシームレスにできました。眼鏡をかけ替える必要はなく、視点を変えるだけ。オートフォーカス機能でタブレット画面にも作業対象にもしっかりピントが合い、ストレスの少ない環境で作業ができました。頻繁に視点を変えても瞬間的に焦点が合い、これも非常にうれしい点です。
普段私が感じていたストレスは消え、快適な視覚体験ができました。
③3Dプリンターの仕上げ(バリ取り)にも最適
ラボにはもう1台、3Dプリンター「Bambu P1S Combo」もあります。この機種は複数のフィラメントを使って出力可能で、私はサポート材を使った出力のために使用しています。
非常に細かい糸のような材料でサポートされるので、出力後にそれを剥がす際も細かい作業が必要になり、苦労します。そのため、ViXion01Sを使ってどれぐらいサポート除去が楽になるのかをテストしました。
テストのためにデザインした来年の年賀状用のはんこです。はんこの印面を下にして出力したので、数字部分にサポート材が詰まっています。
細かいサポート材とバリを特殊なキリ状の工具で削っていきます。まるではんこ職人さんのような雰囲気ですね。普段は、溝の深い部分のバリが見えずに苦労していました。これは眼鏡をかけていても、よく見えない部分です。
しかし、ViXion01Sを使ってみると、作業が簡単に終わりました。特に数字の細かいカーブの部分を仕上げるとき、細部がよく確認できるので非常に楽でした。また、数字の「0」の真ん中の部分が欠けやすいのですが、ここも視認性が上がったので作業が簡単になりました。
もはやViXion01Sがない状態で作業することは考えられないぐらい快適です。
きれいにサポート材を剥がせたため、印影も非常にきれいに出ました。
上に置いてあるのが、除去したサポート材です。こんなにきれいに精密に切り出せるとは驚きです。
まとめ
ものづくりで便利になりそうなシーンを選んでViXion01Sをテストしてみました。結果としては、便利さは想像以上です。
特に、②のタブレット画面と作業対象を交互に見ながらの作業では、大変快適に作業ができました。オートフォーカス機能が非常に良い形で作業をアシストしてくれました。
異なる焦点距離にあるものを交互に見ながら作業するシーンは、他にもあるはずです。その際の煩わしさから解放されることが期待できます。
テストで扱った作業は、細かい作業の中でもサイズ的に大きな部類に入るかもしれません。ものづくりのジャンルによって、例えば表面実装部品の手はんだなどではさらに小さい部品を取り扱うことも多いでしょう。そういった作業をすることの多い方にとっては、ViXion01Sが助けになるかもしれません。
ViXion01Sで作業が効率化できる分野は他にもあります。例えば彫刻やはんこの制作。こうした細かい作業には最適です。座ってする細かい作業なら、たいてい快適になると思います。
クラウドファンディング プロジェクトページURL(2024年12月21日まで)
(Kibidango)https://kibidango.com/2642
(GREEN FUNDING)https://greenfunding.jp/lab/projects/8556
製品の詳細、使用方法、安全に関する情報などは公式サイトをご参照ください。
取材協力:Kibidango、Vixion