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美品、珍品、魔改造!個人も企業も、こだわり倒した作品が大集合——Maker Faire Tokyo 2024 初日レポート #mftokyo2024

オライリー・ジャパンが主催する国内最大級のMakerイベント「Maker Faire Tokyo 2024」が、2024年9月21日から2日間にわたって、東京ビッグサイト西4ホールにて開催中だ。

今年も初日の様子を速報でお届けしたい。

(取材・撮影:淺野義弘、越智岳人)

コンパクトチップマウンター (n.k product2 H05-06)

n.k product2は自作チップマウンターでの部品配置とリフローを実演。

まずはRaspberry Pi 5 にインストールしたオープンソースソフトウェア「OpenPnP」で部品のデータを読み込み、自作のコントローラーとエアポンプで部品を配置する。さらにArduinoベースのリフロー機と組み合わせることで、卓上で基板実装を完結させていた。コンパクトチップマウンターのDIY文化はまだ日本では珍しいという。

年賀状印刷機を改造した基板&バキュームフォーム (ウルカテクノロジー H05-02)

世代によっては見覚えがあるかもしれないこの機械。家庭に一台はあったであろう年賀状印刷機を改造し、プリント基板用のはんだペースト塗布機とバキュームフォーマーへと変身させたものだ。

薄いシートを取り付け、対象に押し付ける構造を活用し、懐かしい機械に新たな使い道を見出した。

蒸気カタパルト(Maker's Vector-0 H05-04)

机の代わりに1/144サイズの航空母艦を展示するMaker’s Vector-0。Maker Faireの中でも珍しい、蒸気の力で動く「蒸気カタパルト」を実演。

電気で湯を沸かし、蒸気をピストンに送って飛行機を送り出す仕組みは、実際の航空母艦でも使われているものだという。装置の重厚感と蒸気のモクモク感は、他のブースではなかなか見られないだろう。

卓上減圧蒸留装置(巴波重工 A04-10)

ハイパワー空気砲弾「エグゾーストキャノン」の作り手としても知られる巴波重工。今年はガラリと趣向を変え、減圧蒸留機を披露。

通常よりも低温で蒸留するため精製品の香りがよく、洗練されたデザインもありすでに飲食店での導入が進んでいるという。原理試作のほかガラスや金属パーツの製造治具として3Dプリントを活用。完成度の高いプロダクトは一見の価値ありだ。

感情表現ヘッドマウントディスプレイ スマイルマシンズ(maxcaffy H02-01)

スチームパンク的な装いの男性がブースにちょこんと座っている。SmileMachines(スマイルマシンズ)と名付けられたヘッドマウントディスプレイは、展示会でのコミュニケーションを盛り上げてくれる。

Raspberry Pi 4BやM5 Atom S3を活用し、ボイスチェンジや顎のリップシンクを実現。外を見るために鏡の反射を利用する、作者のアナログな努力も光る作品だ。

PrintinG。s(奥澤製作所 G01-01)

Maker Faire Tokyoのロゴを床に描くこちらの装置は、市販のインクジェットプリンターを自走式にハックしたものだ。マイコンからプリント時の信号線を送ることで、プリンターを「普通に印刷している」ように動作させているという。カラフルな油性ペンを持たせたロボットとともに、スプラトゥーンのような色塗りやお絵描きが展開されていた。

オムニディレクションクローラ(恵比寿工廠 F03-03)

千葉工業大学大学院の学生が代表を務める恵比寿工廠は、オムニホイールとクローラを組み合わせた運搬用ロボットを実演。

4本のクローラと本体の特殊な構造によって、重量ある荷物を乗せながら80mmまでの段差を踏破する性能を実現した。迫力あるロボットだが、来場者もコントローラで楽しく操作できる。

ロボットマスタースレーブ操作(FITTY H01-03)

FITTYのブースでは、本格的なロボットアームを用いたUFOキャッチャーやダンボール運搬ゲームが楽しめる。出展者自身が実務でも利用しているという産業レベルのロボットアームには、なかなかお目にかかれないもの。手製のコントローラから操作する体験は、子どものみならず大人の心もワクワクさせてくれるだろう。

クレープロボットQと生クリーム絞りロボット(モリロボ G04-01)

ここからは企業ブースを紹介したい。

たくさんの出店者が集まるMaker Faire。歩き回って疲れたら、モリロボのブースに訪れるのがおすすめだ。
自動でクレープを焼く「クレープロボットQ」と「生クリーム絞りロボット」が作る、シンプルで美味しいクレープを味わいながら一休みしよう。作る過程でも、キュートに動く小さなロボットや、コンベアで運ばれる生地の姿から癒しが得られるかも。

タミヤの工作(タミヤ SP03-05)

Maker達の心強い味方、タミヤのブースでは「楽しい工作」シリーズの展示販売が行われている。

「歩いて泳ぐペンギン工作セット」や「歩いて泳ぐアヒル工作セット」は、水中モーターを使った工作を気軽に楽しむため、地上でも独立して動くようにした意欲作だ。初心者向けのカジュアルな製品を展開する一方で、マクニカと共同で企業向けのAIワークショップも実施しており、子どもから大人まで学びを支える姿勢がうかがえた。

M5Stack(M5Stack Technology SP01-02)

M5Stack Technology Co., Ltd のブースでは、制御にM5Stackを活用した電子楽器「かんぷれ」のプロトタイプを体験できる。クラウドファンディングの成功を経て、背面の薄型化(画像2枚目を参照。左側から右側へと改良された)やジョイントを用いた他のM5stack製品との連携など、製品化に向けたアップデートが続いている。この他にも同社の最新製品が多数展示されていた。

同人ハードウェアの製品化マイプロダクトサービス(ビット・トレード・ワン H06-04)

同人ハードウェアの製品化をサポートするビット・トレード・ワン。BTO マイ・プロダクト サービスから製品化されたプロダクトの展示や制作相談を行っていた。USBケーブルの性能をチェックする人気商品「USB CABLE CHECKER2」の後継機種として、スマートフォンやモバイルバッテリーの性能も可視化する新モデルの製品化も進んでいるという。

AcoustoFab(スイッチサイエンス SP01-04)

電子部品ECサイトとしてお馴染みのスイッチサイエンス。イチオシの製品を伺うと、今後取り扱いを検討中だというAcoustoFabの音響浮遊装置を紹介してくれた。装置内で軽量な物体を任意の場所に配置したり、空中で液体を混合したりといった用途を想定しているという。超音波技術を用いた非接触の研究開発装置として、新しい需要が見込めそうだ。

旧チェコスロバキア産の古い電子部品を用いたジュエリーと装飾品(Libor Nováček B02-07)

さて、ここからは個人によるユニークな作品の紹介に戻ろう。

これらは旧チェコスロバキア産のコンピュータから電子部品を回収し、アクセサリーや小物として作品化したものだ。1985年生まれのコンピューターなど、歴史ある機械を丁寧に集め手入れをして新たな命を吹き込んでいる。歴史的価値やコレクターとしての愛情を感じるとともに、寿司をモチーフにした作品など軽やかなユーモアも楽しめる。

ラボトラ(Tsukasa-3D C02-01)

家庭用3Dプリンターで移動式の空間を作り上げたTsukasa-3D氏。

2024年5月から製造を始め、およそ4ヶ月がかりで軽トラックの荷台ほどのサイズを完成させた。3Dプリントされたブロックの間には断熱材が用いられ、宮大工の技術を参考に作り上げたというジョイントのおかげで強度もばっちりだ。

着るモビリティ MOBILE WEAR Mk-VI(交通デザイン研究所 D02-03)

「MOBILE WEAR Mk-VI」と名付けられたこちらのモビリティ。服のように装着し、立った状態でも座った状態でも移動できる「超個人的交通機関」を目指して開発されている。2019年に開発を始めて以来、5年にわたるバージョンアップで重さは10kgを下回った。さらなる軽量化や実用化を目指しているという。

回転する花輪(宮野有史 B01-12)

一瞬でめでたい気持ちになる「回転する花輪」は宮野有史氏による作品。

電熱線カッターでスタイロフォームを切り出した特大版から、3Dプリントした卓上サイズまで、大小さまざまな花輪がMaker Faireの舞台に華を添えていた。

Desktop Robot(小林竜太 F01-03)

fabcrossのライター/クリエイター陣もMaker Faire Tokyoに出展している。「人の心を動かすものづくり」をモットーに作品を制作する小林竜太氏のブースでは、インタラクティブに反応し、コントローラーで操作できるロボット達がお出迎え。

子どもから大人まで笑顔になる、フレンドリーな作品に人気が集まっていた。

3Dプリンタ製靴下編み機(FARMTORY-LAB B01-03)

FARMTORY-LABとして出展するむらさき氏は、3Dプリンターで復刻した靴下編み機とその成果物を展示。

靴下サイズの初号機から、ハンディサイズの小型機や、オルゴールと一体化した最新型まで、バリエーション豊かな編み機たちに興味をそそられるに違いない。

太ノズル3Dプリントの世界(ひとしんし C01-08)

ひとしんし氏は「太ノズル3Dプリントの世界」として出展。1.0mm以上の太いノズルを用いて3Dプリントした作品たちは、通常の3Dプリント作品とは異なる魅力を放つ。粘土のようにぽってりしたものから、ワイヤーフレームのような繊細な形まで、太ノズルの世界の多様さに目を見張ること間違いなしだ。

安い、早い、巧い! 100均ロボット(八幡浜の三瀬医院 B02-03)

「Dr.片山の100均ロボット研究室」でお馴染み、片山均氏は大小さまざまなロボットを展示。成人の膝ほどまである大きなロボットも、その動力は100均に売られている毛玉取り機だけ。創意工夫の塊を間近で見れるのも、Maker Faireならではの喜びだ。

数えきれないほどの作品が集まるMaker Faire Tokyo 2024は、2024年9月21日(土)と9月22日(日)の2日間にわたって開催中。自分好みの作品を見つけたり、努力や工夫に耳を傾けたり、それぞれの方法でこのお祭りを楽しんでほしい。

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