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Maker FaireやNTで使える! 展示会で楽しく触れ合える作品を展示する7つのコツ

私は2019年頃から、Maker Faireを始めとするものづくりイベントに出展するようになりました。展示する作品は来場者が試乗できる乗り物や小型ロボットで、どれもコントローラーで操作し体験するものばかりです。

操作も楽しいのですが、ラジコンっぽさに次第にマンネリを感じ始めました。もっとさまざまな角度から触れ合える作品を展示したいと考えて、最近では触れ合えるネコロボットを作っています。今までに比べて多くの表現ができるはず! と期待が高まる一方で、体験相手に合わせた応答をしないと魅力が伝わりにくいかもという不安もあります。展示方法を工夫しなければいけません。

タイミングのいいことに、9月に出展が決まっている展示会が2つもありました。NT東京2024とMaker Faire Tokyo 2024です。展示方法を考える最大のチャンスです。

NT東京で展示してみた

まずは2024年9月7~8日に科学技術館で開催されたNT東京2024に出展しました。ネコロボットを中央に置き、横に体験用の小物や技術紹介パネルを配置しています。

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ネコロボットは訪れた人のアクションに対し、表情を豊かに変え、鳴き声を発して応えてくれます。いろいろなリアクションで体験者を喜ばせてくれます。

この展示のために、私はさまざまな工夫を凝らしました。その甲斐あって、展示は大成功。多くの人がネコロボットと遊んでくれ、子どもにも大人気でした。私がネコロボットの魅力を引き出すために工夫を7つ紹介します。最初の2つは作品自体の仕様に関わる工夫、後半5つは会場での展示方法についてのノウハウです。

コツ1:音声に頼らない入力方法

触れ合い型の展示で最初に悩んだことは「どういう入力を来場者から受け取るか」でした。例えば、ボタンを押したり、マイクに話しかけたり、方法はいくつか思い浮かびます。ロボットを作るとなると、スマートスピーカーのように音声入力をトリガーにしたくなりがちです。

しかし、展示会場というものは、往々にして周囲がうるさいものです。たくさんの人が往来し会話をしているので、音声入力をしても雑音しか取得できません。

そこで参考にしたのが、科学未来館のパートナーロボット「ケパラン」です。ケパランはアイドルを応援するように、うちわを見せて入力情報をもらいます。例えば「ウインクして」と書いてあるうちわを見せると、ロボットがウインクします。

そこで、私のネコロボットも似たような方法を取ることにしました。ただ、全く同じにしても面白みがないので、ネコの特徴を生かしたものを見せます。例えば、魚やネズミです。魚に文字を書き、カメラで画像を分析します。

事前に画像を学習させておきます。 事前に画像を学習させておきます。

コツ2:分かりやすいリアクションをする

入力のあとは出力です。ネコロボットがどのようなリアクションをするかを考えます。

まずは動きです。細かすぎたり、何をやっているか分からなかったりするような反応だと相手に伝わりにくいものです。ここでは、ウインクや尻尾を振るなど、シンプルなものを選定しました。

次に音声です。ネコロボットなので鳴き声も重要です。ニャーという基本的な音声に加え、見た目とのギャップを出すために「渋い声でしゃべる」という機能も追加しました。これは展示でとてもウケたので、大成功だったと言えるでしょう。またアニメ作品の影響からか、クロネコがしゃべること自体はあまり違和感がないようにも思えます。

さらに、手で触ったらリアクションする機能も追加しました。子どもほど作品に触れるので、それに対する細かな応答ができるようにするのも魅力的に見せるコツのひとつです。

触れたら本物のネコのような反応をします。 触れたら本物のネコのような反応をします。

コツ3:大きな音で知らせる

音声出力はよいものの、大きな失敗がありました。想像以上に会場が騒がしく、ネコロボットの声があまり聞こえなかったのです。来場者は耳を近づけないとうまく聞き取れません。せっかくのおしゃべり機能なのに、これでは魅力が半減します。悔しいですね。

残念ながら展示1日目は準備不足で諦めざるをえませんでしたが、2日目には改善に成功しました。外付けの大型スピーカーを用意したのです。これでしっかりネコロボットの音声が聞こえるようになりました。今後も音声を出力する作品は、大きめのスピーカーが必要だなと感じました。

外付けのスピーカーでも意外と違和感がありませんでした。 外付けのスピーカーでも意外と違和感がありませんでした。

コツ4:触れ合いやすい配置にする

展示中に気づいたことがあります。それは体験に使用した小道具(魚やネズミなど)を、特に子どもはなかなか片づけてくれない点です。難しい問題ですね。

最初は花瓶に小道具を挿していたのですが、対策として机上にそのまま並べるように変更しました。あえて机から少しはみ出すようにもしています。そうすることで手に取りやすいし、片づけるストレスも感じにくくなりました。

スッと、気軽に手に取りやすくなりました。 スッと、気軽に手に取りやすくなりました。

逆に、最初は少しオシャレにしすぎたなという反省もありました。あまりキレイに配置し過ぎると、気軽に手に取りにくく、体験しにくい雰囲気もでてしまうなと感じました。

コツ5:バランスがよい技術紹介パネルを作る

技術紹介用にA4サイズのパネルを用意し、作品の横に並べました。来場者の興味を引く効果があります。しかしここでも問題が発生しました。内容が高度過ぎると、子どもに読んでもらえない点です。逆に幼稚すぎる内容にすると、技術者が遠ざかってしまいます。難しいですね。

分かりやすい例を示すと、コンピューターと書くか、ラズパイと名称を書くか、Raspberry Pi4 Model B 4GBと型式を書くかでしょうか。ものづくりの展示会には老若男女、技術者もそうでない人も来場します。そういった多様な人たちに理解してもらうには、バランスがよい技術紹介パネルが必要です。

そこで私は、2種類のパネルを用意しました。ひとつは簡単な作品の概要、ものづくりの経験がない人向けです。そしてもうひとつはシステム構成を細かく書いた詳細パネル、ものづくりをたくさんやる人向けです。「モーターは何使ってるの?」みたいな質問に対し、詳細パネルは大きな効果を発揮します。メリハリを付けた解説が人を惹きつけるのです。

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コツ6:中身のモックアップを作る

紹介パネルでは書ききれなかった、内部の細かい仕組みを聞かれることもあります。これはものづくり上級者ほど聞く傾向がありますが、言葉で表現するのはとても難しいものです。しかしだからといって、作品をその場で分解して解説するのは無理です。

そこで私は、中の機構が分かるモックアップ(模型)を並べて展示することにしました。モックアップは簡易で構いません。細かい解説を必要とする場合、そのモックアップを実際に触れ、動かしてもらうことで理解を深めてもらいます。

ネコロボットの首が動く機構を準備しました。 ネコロボットの首が動く機構を準備しました。

コツ7:ローカル環境で動かす

ネコロボット本来の仕様では、音声出力にGoogleの生成AI「Gemini」や音声合成ソフトウェア「VOICEVOX」を使用しました。

まずはGeminiでネコロボットが話す文章を作成します。「あなたは渋いクロネコです。○○と言われたときの返事を考えてください」というようなプロンプトを用意し生成しました。そしてVOICEVOXの渋い声のキャラ「青山龍星」を選定し、生成した文章を読み上げます。

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自宅環境ならこれらをリアルタイムで実現できるのですが、展示会場では通信の不通や遅延などネットワーク環境の問題から、なかなか実現が難しいものです。

対策として、会場では事前に用意した音声をローカル環境で再生することにしました。しかし何回も同じセリフが続くとつまらないので、数十パターンを用意し、ランダムで選定する工夫をしました。体験者に飽きさせないようにするのが楽しませるコツです。

Maker Faire Tokyoに向けて

以上がNT東京2024で実践して成功した展示7つのコツでした。

次回は早くもMaker Faire Tokyo 2024が待ち構えていますが、さらに進化した展示内容を予定しています。

まずは今以上に、もっとネコっぽい振る舞いをさせるつもりです。カメラ入力だけでなく、ネコジャラシのリアクションを追加したいと思います。ネコジャラシに触れることで、ネコロボットが楽しそうな表情を浮かべます。そうすることでもっとかわいさが増し、遊びの幅が広がることでしょう。

ネコジャラシはNFCタグで反応します。 ネコジャラシはNFCタグで反応します。

また、ネコロボットの目線が展示会場に訪れた人と合うような機能も追加します。目が合うことで、まるで本当に生きているかのように感じられることでしょう。

ただ単純に動かすだけでなく、展示方法に工夫を加えながら楽しく人と触れ合うことで、作品が何倍にも輝いて見えますね。ぜひMaker Faire Tokyo 2024に遊びに来てください。

https://makezine.jp/event/makers-mft2024/m0064/

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