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海水から微量リチウムを抽出、濃縮できる電気化学セルを開発

海水から微量リチウムを抽出し、安価に濃縮できる電気化学セルが開発された。 © Li et al. (2021). Published by The Royal Society of Chemistry

サウジアラビアのアブドラ国王科学技術大学院大学(KAUST)の研究チームが、リチウム・ランタン・チタン酸化物(LLTO)から構成されるセラミックメンブレンを利用して、海水から微量リチウムイオンを分離する電気化学セルを開発した。分離プロセスを繰り返すことによって、リチウムを0.2ppmから9000ppmに濃縮でき、最終的に99.94%の高純度リン酸リチウムを安価に得ることを確認した。需要が急速に拡大しているリチウムイオン電池について、将来的に陸上リチウム資源の枯渇が懸念される中で、含有濃度が0.2ppmと極めて低い海水から、工業的に見合うコストと濃縮度、品位でリチウムを採取できるプロセスとして期待している。研究成果が、『Energy & Environmental Science』誌の2021年5月号に論文公開されている。

地球温暖化防止の観点から自動車のEVへの流れは拡大し、携帯型デバイスの普及も合わせてリチウムイオン電池の需要は増加し続けている。研究チームは、需要増加が加速することで、2080年までに陸上におけるリチウム資源が枯渇してしまうと見ている。一方で、海水には陸上の5000倍ものリチウムが含まれるが、その含有濃度はわずか0.2ppmと低く、工業資源として活用することは極めて難しい。

KAUSTの研究チームは、リチウムイオンが透過できる充分な大きさの孔を有する一方、より大きな金属イオンはブロックされる結晶構造を持つ、リチウム・ランタン・チタン酸化物(LLTO)セラミックメンブレンを考案した。このメンブレンを中央に設置し、両側の区画にそれぞれ銅陰極とプラチナ・ルテニウム陽極を配備した電気化学セルを設計した。中央供給室から海水を供給し電極間に3.25Vの電圧を印加すると、海水中のリチウム陽イオンは、LLTOメンブレンを透過して、陰極のある緩衝液区画に移動する。一方、大きな金属陰イオンは通常の陰イオン交換膜を通して、陽極のある塩化ナトリウム水溶液区画に移動する。

実験では、紅海から汲み上げられた海水から分離されたリチウム濃縮水を、更に4回セルに再投入し濃縮プロセスを繰り返した結果、9000ppmに濃縮できることを確認した。最終的に、Li/Mg比が4500万以上、純度99.94%の高純度リン酸リチウムを得ることができた。この品位はリチウムイオン電池メーカーの製造基準に適合するレベルだという。

この分離プロセスにおいては、陽極で塩素ガス、陰極で水素ガスを発生させることができるとともに、残留海水は海水淡水化プラントにおける中間的な処理水として供給できるため、その有効活用によってリチウム分離コストの低減も可能だ。研究チームの試算結果では、リチウム1kgを海水から抽出するのに必要な電気コストは、たった5ドルだという。「今後、メンブレン構造およびセル設計を最適化して、プロセス効率を向上させる予定」と、研究チームは語る。更に、ガラス業界と提携して、LLTOメンブレンを手頃なコストで大量生産する手法を開発するつもりである。

fabcross for エンジニアより転載)

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