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編み目のデザインでニット生地の伸縮性や硬さが変化——数学的裏付けによってソフトロボットなどへの応用も期待

Credit: Allison Carter

米ジョージア工科大学を中心とした研究チームは2024年6月3日、物理実験とシミュレーションを組み合わせた研究により、編み物の技術的なノウハウに対しての数学的な裏付けが明らかになったと発表した。糸の操作や編み目のデザインによって、ニット生地の伸縮性や硬さを変えられる編み物に着目したこの研究は、ソフトロボット、ウェアラブル、ハプティクスといった最先端のインタラクティブ技術に応用できる可能性を提示するものだ。

古くから続く手工芸の1つである編み物が、先端製造業用途への転用の可能性から再び注目を集めている。編み物は1次元の織り糸を、柔軟で耐久性がある2次元の生地に変える。何世紀にもわたり、手編み職人たちはさまざまな種類の編み目を使い、異なる種類の編み目を組み合わせることで、衣服の形状や伸縮性を調整してきた。

他の機械的メタマテリアルと同様に、ニット生地の伸縮性(弾性)は、織り糸自体だけに起因するものではなく、局所的な編み目のトポロジーと編み目パターンから発生する特性だ。したがって、編み物はひと目編むごとに弾性特性を調整できる付加製造技術とみなすことができ、ソフトロボティクス、ウェアラブルエレクトロニクス、培養組織、材料設計など、多くの分野での応用が考えられる。

しかし、編み目の種類に基づく機械的特性を予測することは、依然として難しい。エンジニアが使用できるスマートなテキスタイルデザイン技術を生み出すには、ニット素材の背後にある力学を理解することが不可欠だ。

研究チームは、ニット生地の弾性挙動を決定する根本原理を解読しようと考えた。経験豊富な編み物職人はどの生地が他の生地よりも伸縮性があるかを識別でき、その最適な用途について直感的に判断するという。そこで、研究チームは編み物の技術的ノウハウを取り入れ、数学的裏付けを加えることにした。実験とシミュレーションを組み合わせて、糸の操作、編み目パターン、生地の弾性との間にある関係を探り、これらの要素がどのように連動して生地全体の挙動に影響を与えるかを調べた。

まず、糸と生地を物理的に伸ばす実験から始め、糸の曲がりやすさ、けば立ち具合、特定の編み目における糸の長さや半径など、主なパラメーターを特定した。次に、その結果を基に、X線検査と同じように、編み目の中の糸を調べるシミュレーションを設計した。物理的測定では編み目の内部を見ることは難しいため、糸のどの部分が他の部分と相互作用したかを見るために、物理的測定をできるだけ正確に再現するシミュレーションを使う。

これらの実験とシミュレーションから、「生地パターンをデザインする際に単純な調整を加えるだけで、生地全体の伸縮性や硬さを変えられることを発見した」と、研究論文の筆頭著者であり、当時は博士課程学生だったKrishma Singal博士は述べ、「糸をどのように操作するか、どのような編み目を形成するか、そして編み目をどのようにパターン化するかによって、最終的な生地の反応が完全に変わる」と説明している。

今回の研究は、デザインのバリエーションが生地の反応に大きく影響を与えることを示し、編み物には驚くべきプログラムの可能性があることを明らかにしたものだ。しかし、ニット生地についてはまだ多くの疑問があるため、研究チームは、ニット生地について科学的な研究をさらに進める予定だ。そして、ニット素材の数学的理論を確立することで、編み物、ひいては繊維製品全般が、より多く工学的に取り入れられ、応用されることを期待しているという。

この研究の詳細は、2024年3月23日付で『Nature Communications』に掲載された。

fabcross for エンジニアより転載)

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