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銅でコーティングした鋼が90%の滅菌性能を示す

米ジョージア工科大学の研究チームは、細菌感染を防ぐための改良ステンレス鋼を開発した。電気化学的手法によりステンレス鋼表面にナノサイズのテクスチャをエッチングし、天然の抗菌特性を持つ銅でコーティングした抗菌素材だ。研究成果は、『Small』誌に2024年5月20日付で公開されている。

細菌は、グラム陽性菌とグラム陰性菌に大別できる。厚い細胞膜が何層にも重なるグラム陰性菌は、化学薬品を使わずに殺菌するのは困難だ。また薬剤耐性菌の問題も世界的に深刻で、2019年に薬剤耐性菌による感染症が直接の原因で死亡した人の数は世界で127万人で、さらに500万人近くの死亡の一因となっているという。

同研究チームが開発した抗菌素材は、グラム陽性菌、グラム陰性菌双方に有効で、化学物質を用いないため薬剤耐性も問題にならない。

研究チームは、まずステンレス鋼の表面を電気化学的にエッチングする手法を開発し、ナノサイズの針のような構造を作り上げた。この構造により細菌の細胞膜に穴をあけることができる。さらに、再び電気化学的手法を用いて、ナノテクスチャを施したステンレス鋼表面に銅イオンを析出させた。抗菌特性を持つ銅をコーティングすることで、ナノテクスチャステンレス鋼の抗菌活性は非常に高いものとなった。

この2段階の抗菌作用により、グラム陰性菌である大腸菌は97%、グラム陽性菌である表皮ブドウ球菌は99%減少した。

銅は高い抗菌特性を持つにもかかわらず、高価であるため物質表面の汚染対策にはあまり使用されてこなかった。しかし、今回開発した手法は銅を薄くコーティングするだけなので、費用対効果が高い。

研究チームによると、抗菌ナノテクスチャステンレス鋼は医療現場において、ハサミやピンセットなどの一般的な器具、ドアノブや階段の手すり、シンクなどに使用できる可能性がある。病院などは、ステンレス鋼の使用が多く、表面の細菌も多い環境だ。すでにステンレス製保存容器にはさまざまな電気化学的コーティングが用いられているため、今回開発した手法を既存の方法に簡単に取り入れることができる。

今後研究チームは、ナノテクスチャステンレス鋼が、人体に有害な他の細菌に対しても有効かを検証する予定だ。また、感染症を防ぐために医療用インプラントに応用する可能性についても調査したいとしている。

fabcross for エンジニアより転載)

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